半ば常識のようにあちこちのブログで語られている「トラリピの利益幅はATRで決めるべし」という文言。
このATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)というのはなにかというと、1日の正しい平均値幅と言われているものです。
でも、めがねこはこのATRでトラリピの設定、特に利益幅を決めるということに大きく反対なのです。

ATRはんた~い
ではATRの結果は無意味なのか?と言われると、決してそんなことはありません。
ただ過去の最高の設定が割り出せるバックテストと比べると、ATRの性能には相当な差があると感じざるをえません。
さしずめ、バックテストが古いカーナビなら、ATRは方位磁石のようなものです。
バックテスト=古いカーナビ
ATR=方位磁針
正しい目的地に着くためには両方とも役に立ち、両方とも完璧ではありません。
でも、あなたは目的地に行くときに、あえて方位磁針を選びますか?
トラリピでのATRの功績

誤解してほしくはないのですが、ATRは利益幅を決めるに一役買っており、その数字が全くの無意味というわけではありません。
トラリピを行う際に、適当にトラップ幅や利益幅を決めるよりはATRを参照して決めたほうが利益率があがります。
つまりトラリピ黎明期には、なんとなくトラップ幅/利益幅を決めいてたものが、ATRを参照することに気づいて利益率を上げてきたという過去の功績があるのです。
利益幅についてなにも知識がなく、どちらへ進んでよいのかわからない時代には、ATRを参照することによって方位磁針のように方向性を示してくれたのです。
ATRがトラリピの理想の利益幅からはほど遠いという3つの証拠

めがねこがATRを過信しないのは、多方面から見てATRは理想の利益幅からは程遠いと感じるからです。
おもに3つ問題点があります。
- バックテスト結果との大きな相違
- 理想の利益幅の原理に反している
- ATRをチャートの波に当てはめるという構造上の問題
バックテスト結果との大きな相違
バックテストというのは過去の値動きのデータを使って、トラップ幅や利益幅を任意に設定してシュミレーションできるテストのことです。
未来のことはわかりませんがデータを取得した値動きに関してはバックテストの結果が最良の結果になります。
バックテストは取得したデータ内においてはトラリピのベストの設定がわかる
もしATRが利益幅を決める上で参考になる情報なら、バックテストと近い結果が出るはずです。
しかし、わたしがバックテストを何百回と行った結果と他ブログで公開されているATRをもとにした設定を見比べると、ベストとされる設定が100pips以上も違うこともめずらしくありません。
たとえ過去のデータとはいえ、確実にベストな設定であるバックテストと、ここまで数字が離れてしまっているATRは本当に参考になるのでしょうか?
わたしがバックテストを行っているときに、さらに気づいたことがあります。
ATRの数字はいつも同じなので利益幅の原理に反している
ATRは取得するTR(1日の真の値幅)の平均です。
ですから、何日分のTRの平均を出すかで多少は結果に差が出ますが、結果は1つの値幅として導き出されます。
でも、これは実はおかしなことなのです
ちょっと考えればわかると思いますが、トラップ幅が1pipの時と50pipsのときでは、かなり理想の利益幅はかわってくるはずです。
事実、わたしがバックテストを行った結果でもトラップ幅がせまいほど、理想の利益幅は大きくなる傾向がありました。
つまり、理想の利益幅はトラップ幅によってかなり変動します
トラリピにおいてかなり大事なトラップ幅の影響を全く無視している時点で、ATRの正確さや精密さはあまり期待できないと言えるでしょう。
ATRをチャートの波に当てはめるという構造上の問題
非常にカン違いされていると思われるのがこの構造上の問題です。
ATRは1日の平均値幅をはかる指標であって、チャートの波をはかる指標ではありません
つまり、元からトラリピの利益幅を設定するのに適している指標というわけではなく、たまたま少しは使える指標だったから使っているにすぎないのです。
言葉で説明してもピンと来ないと思うので、ここで例をあげます。
次にあげるのはすべてATRが1円(100pips)のチャートです、見比べてみてください。
チャート①

これがトラリピでATRを説明する時などによく使われるチャートです。
1日ごとに値幅が1円ずつ順番にあがったり下がったりしています。
たしかに実際にこういうチャートであればATRと同じ1円に利益幅を設定すれば最大の利益を得ることができるでしょう。
チャート②

こちらのチャートもATRは1円(100pips)です。
7日かけて1円ずつレートが上昇し、7日かけてレートが元の100円まで下落しています。
ATRは「1日の平均値幅」ですから、上がったか下がったかは関係ないのです。
つまり7日上がりっぱなしでも、下がりっぱなしでも、1日の値幅が平均1円ならATRは1円なのです。
もちろん、このチャートでの理想的な利益幅は7円になるはずです。
このようにATRには理想の利益幅を決めるのに必要な情報がかなり欠けていると言えます。
チャート③

チャートの①②がかなり極端だったのでチャート③は、より実際にありそうなチャートの形にしました。
もちろん、このチャートのATRも1円(100pips)です。
そして、このチャートの理想の利益幅が1円ではなさそうなことは想像にむずかしくありません。

もう、わかりましたね?
ATRで使われるTR(1日の真の値幅)は絶対値を採用しています。
絶対値ということは上がったか下がったかは考慮されないので、同じATRが1円(100pips)のチャートが複数あれば、それぞれのチャートの性質は大きく違う可能性が高いのです。
だから、方位磁針が方角だけを示すように、ATRは方向性だけを示し詳細な情報は有していないと言えるのです。
ATRでトラリピの利益幅を決めることへのさらなる疑問

さて、前の章ではATRで利益幅を決めることについて3つの問題点を指摘しました。
でも、まだあるのです。
チャートのどの波を捉えるのが最高の利益幅なのか?
そもそもチャートには大きな波、小さな波とさまざまな波が積み重なってできています。
ATRで利益幅を決めているブログやホームページをみると、暗黙の了解のように「チャートが1番多く繰り返している波」がベストな設定であるかのごとく書かれています。
でも波が1番多く繰り返される幅が1番利益が出るという客観的な根拠はあるのでしょうか?
波が多く繰り返されるというのは決済の頻度は多くはなりますが額が最高になるとは限りません。
わたしが別のブログ記事で検証したところによると、見た目のチャートの波の数と理想的な利益幅は一致しないという結果が出ました。
そもそも、波がひんぱんに繰り返される幅が1番利益が出るという前提からして実は間違っているのです。
じゃあバックテストはトラリピでは万能なの?

ここまで読んでくれた方はきっとこう思っていますよね?
「ATRがダメっていうなら、じゃあバックテストは信頼できるの?」って
もちろん、バックテストは過去の指標なので未来のおいてその信頼性はわかりません。
きっと扱っている通貨ペアや、未来の為替の傾向によってもバックテストの信頼性はかわっていくでしょう。
ただし、わたしが検証した一部のデータを見る限りでは、バックテストの信ぴょう性は高いという結果が出ました。
【結論】ATRの有益度の度合いには疑問が残る

トラリピはボラティリティ(値動き)によって利益を得る手法です。
ATRは1日の平均の値動きをはかる指標なので、適当に利益幅を決めるよりはATRを参考にしたほうが利益があがります。
ATRの結果は具体的な数値で表されますが、その数字に説得力のある意味はなく、実はボラティリティが大きい小さいなどの大まかな傾向しかわかりません。
対してバックテストの結果というのは、過去の参照したデータ内においては最高の設定であることが保証されています。
未来においてはATRもバックテストも正確な情報ではありませんが、そもそもATRの情報は方位磁石のように「利益幅が大きい」「小さい」などの方向性しか示していないのです。
バックテストも古いカーナビのごとく、将来においては間違っている場合もあります。
さて、あなたが目的地に行くときに古いカーナビと方位磁針があったらどちらを選びますか?
設定ガイドでトラリピをはじめよ♪