以前ブログでFXと税金について書きました。
その中で触れた確定申告額を減らすテクニックの中に、損失を確定する(損出し)というものがあります。
今回はその方法について具体的に実例を交えて説明していきます。
そもそも損出しとは? なぜFXの納税額が減らせるの?

損出しを言葉で説明すると、評価損があるポジションを決済し損失を確定するということになります。
評価損があるFXのポジションを決済して損失を確定すること
FXの確定申告では確定損益のみを対象(法人は例外)にするので、損出しが申告額を減らすのに大きく役立ちます。
なお、損出しは実際にはほとんど損をしません。
順を追って説明します。
FXの損出しは納税額を減らすために有効
FXの課税対象のイメージ図です。

どんなに含み損があっても全く考慮がされないので、この図のように時価総額は-15万円(つまり15万円損をしている)なのに、課税対象は125万円なんていう悲しい状況が発生します。
つまり、損しているのに125万円の利益があると申告して、その分税金を払わないといけないのです。
そこで活躍するのが損出しです。

この図はわたしが実際に9月に行った-約65万の損出しを例にしています。
時価総額は-15万円でかわりませんが課税対象は60万円まで下がりました。
ここからはその具体的な方法を書いていきます。
FX手動トラリピの損出し対象は評価損が大きいものを選ぶ

損出しの対象は評価額のマイナス額が大きいポジションから選んでいきましょう。
もちろん手動トラリピ以外のポジションがあればそちらから損出ししても結構です。
まずは大きなマイナスのポジションを損出し候補としていくつかピックアップします。

注意点があるよ
この時に注意してほしいのがスワップ額です。
多くのFX口座では(例外もアリ)スワップ額は決済した時点で確定損益の対象になります。
つまり評価額が大きくマイナスでもスワップ額が大きくプラスであればお互いを相殺してしまうので、そのようなポジションはできるだけ損出し候補から外します。
損出しではなく損切りもアリ

ここでいう損出しと損切りとは全く違うので確認しておきましょう。
損切り
損失を出してトレードを終了すること
損出し
一時的に損失を確定させること(トレードは継続)
将来的に利益を出せる見込みがうすいポジションについては思い切って損切りしてしまうのもアリです。
損切り方法はとても簡単で、対象のポジションを決済するだけです。
FX納税額を減らす具体的な損出しの方法

それでは具体的な損出しの方法をお伝えします。
ここでは手動トラリピのポジションについて説明していきますが、それ以外のポジションでもやり方は同じです。
損出し対象を決める
まずは損出しする対象を決めましょう。
損出しするポジション

代わりのポジションを保有する
損出しは損切りではないので、代わりのポジションを保有します。
なお、この時点でのレートはこのようになっています。

損出し対象のポジションの合計が0.6万通貨なので成行で0.6万通貨を保有します。

新しいポジションの決済注文を行う
新たに保有したポジションは、損出しする古いポジションの代わりです。
ですから、古いポジションと同じ決済レートを注文します。
今回は0.5円レートが上がったら決済することにしていたので指値注文でこのように注文します。

古いポジションを損出しする
対象の古いポジションを成行注文で決済します。

決済レートがはじめに表示したレートとほとんどかわらないことがわかります。

なお、この損出しで-13,368円を確定させることができました。
なぜ実際に損はしないのか?
いちおう、なぜ実際はほとんど損をしないのかをご説明します。
まず、こんかい損出ししたポジションは0.2万通貨×3、そしてそれぞれが元のレートより0.5円上昇したら決済をする手動トラリピでした。

つまりポジション1つにつき2000通貨x0.5円なので約1000円、3つあるので約3,000円の利益が期待できるポジションでした。
そして、こんかい損出しを行ってしまったので-13,368円という損失が確定してしまいました。
でも、代わりのポジションを保有したのでそれが規定のレートで決済されれば利益がでます。

代わりのポジションは81.416円で保有しましたので、それぞれ指値で決済すると以下の金額の利益が期待できます。
新規レート | 決済レート | 差益 |
---|---|---|
81.416 | 84.9 | 6,968円 |
81.416 | 84.4 | 5,968円 |
81.416 | 83.9 | 4,968円 |
これを全部たすと17,904円、そしてすでに損出しした分が-13,368円、差引は4,536円がこのポジションから期待できる利益になります。
もともと3つ合わせて3,000円の利益が期待できるポジションだったので、ほとんど損はしていないことになるのです。

期待できる利益が1,500円くらい増えたのはスワップ益がでたからです

厳密には代わりのポジションを持ちかえたときのスプレッド分だけ損します

今回の例だと96円が本当に損した額になります
トラリピにもある損出しの方法
手動トラリピだけではなく、マネースクエアのトラリピ
にも損出しをする方法があります。
それは、マイナススワップを清算することです。
マイナススワップを清算すれば損出しができる
ほとんどのFX口座ではスワップを清算したタイミングで、スワップ損益が確定するようになっています。
もちろん、マネスクのトラリピでも同様なのでマイナススワップの分は損出しを行えるというわけです。
損出し方法はとても簡単でポジションの振替ボタンを押してマイナススワップを清算するだけです。
FXの損出しは意味あるのか?納税を先延ばしにしているだけでは?の回答

結局FXの損出しというのは損失を出して納税額を減らし、将来そのぶん多めに利益が期待できる方法です。
ここでこのような疑問をもつ方もいるかもしれません。

結局は納税を先延ばしにしているだけだよね?
これについては、そうとも言えるし違うとも言えます。
わたしは以下のような理由から損出しには利点が多いと感じています。
損出しによって確定申告をしなくてもよくなる人がいるから
会社員などの給与所得者の方で年収が2000万円未満の方なら雑所得(FXは雑所得にふくまれます)が20万円以下なら確定申告をしなくてもよいということになっています。
このため、損出しでFXの利益を20万円未満まで減らせる会社員の方はFXの所得税が実質免除されるという大きなメリットが発生する可能性があります。
損出しをしないと税金が払えないのに払わないといけなくなるかもしれないから
序盤の損出しの説明の例を覚えているでしょうか?
これです

実際の時価総額が-15万円なのに課税対象は125万円
FXの税率はざっくり20%なので、時価総額が-15万円なのにさらに25万円も税金を払わないといけなくなるのです。
これは確定利益が増えやすく、含み損も増えやすいトラリピによく起こる現象です。
世の中、FXで赤字なのにさらに25万円も税金を払える人ばかりではありません。
この税金を無理に払うことで、生活になんらかの支障がでる人もいるでしょう。
こういう理由から損出しはとても意味のある行為だと考えてます。

もちろん、すべての状況を把握した上で損出しをしない選択をする人もいますね
複利の効果があるから
利益が出ている場合でも損出しは有効です。
例えば損出しで10万円の税金を1年伸ばしたと仮定しましょう。
あなたがもし利回り10%のFX投資ができているとしたら、この10万円は翌年には11万円になっています。
もちろん翌年になればこの先延ばしにした10万円の税金をそっくり払わないといけなくなるほど利益が出ている可能性は高いでしょう。
それでも、この10万を元手にして得た1万円の利益に対しては、所得税である約20%の税金しか加算されません。
つまり1万円の利益に対して2千円程度の税金なので、損出しをしたことで8千円利益を増やせたということになるのです。
このように、安定的に利益を出せる人にとっては損出しは大きな節税の効果があります。
FXの損出しを知って賢く確定申告を乗り切ろう

運用の特性上、含み損を多く抱えるトラリピや手動トラリピは、そのぶん確定利益も大きくなりがちです。
FXでは法人をのぞき、決済取引がなされたもののみ課税対象になります(スワップ益はそれぞれのFX口座により取り扱いが違う)
含み損が多いままだと課税対象額が大きく増えてしまう可能性がありますので、できるものは損出しをして申告額を減らすことが得策です。

トラリピなどの自動売買については損出しの知識がありません、ごめんなさい